離婚を考える前に – 知って得する離婚マニュアル
夫婦・離婚の問題

離婚を考える前に

離婚の判断をする前に

離婚をしようかどうしようか決断に悩んでいる方の心の葛藤は、計り知れない苦悩があると思われます。誰も好き好んで離婚をする人なんていないと思いますが、夫婦の歯車が狂い、蓄積された現状の不満が限界点に達したとき、離婚も選択肢の1つとして考えるかもしれません。

最近では「バツイチ」という言葉も一般化して、離婚をすることは特別珍しいことではなく、以前ほど暗いイメージはなくなってきました。しかし、離婚は簡単ではありません。莫大なエネルギーが必要となります。口も聞きたくない配偶者と、子供をどちらが引き取るか、養育費はいくらにするか、財産をどのように分けるかなど、たくさんの決め事を話し合わなければなりませんし、離婚後も、金銭的な問題や、住む場所、仕事の問題など、結婚する時よりも考えなければならない問題、法的知識が必要になってきます。

まずは今の心境を客観的に整理してみましょう。
1.離婚には反対だが、相手が望むのであれば、条件によっては離婚してもよい。
2.離婚してもよいが、条件による。
3.今は離婚したくないが、将来ある時期には離婚を考える。

未成年のお子様がいらっしゃるのであれば、離婚の判断をする前に、もう一度冷静に考え直すことをお勧めします。
子供が未成年の場合、妻側が子供を引き取るケースが多いのですが、まだまだ女性が働ける職種の選択の幅も狭く、経済的にも厳しいのが現状です。
親の勝手で子供を不幸にしてはいけないのです。子供を引き取って育てていける自信があるか、または相手方に子供を渡してでも離婚をしたいのか、じっくり考え直してください。

話もしたくない、口も聞きたくない配偶者と今後のことを冷静に話し合うのは本当につらいことだと思います。しかし、離婚を決断することが、あなたにとって本当に幸せになれる選択なのかどうか、冷静に判断しなければなりません。
お互いの良い面も悪い面もさらけ出し、自分の意見を述べるだけではなく、相手を立て、意見も受け入れ、じっくり話し合いを重ねてください。
決して遠慮をしてはいけません。主張するべきことは主張しましょう。話を聞いてもらうことで、溜まった思いが解放され、考えが多少変わることだってあります。

夫婦双方のみの話し合いでは、話が進まず、冷静な判断ができない場合は、第三者に間に入ってもらい、両者の言い分を客観的な立場で聞いてもらいましょう。もし話し合いができるような環境ではなければ、手紙やメールなどを活用しても良いと思われます。
家庭裁判所の「家事相談」や法律事務所を利用するのもお勧めです。家事相談では話し合いが円満に解決に向かうように相談に乗ってくれます。後々になって後悔しないように、まずはじっくり話し合いをしましょう。

離婚をするかどうかは、あくまであなた本人が決意することです。
周囲に離婚を勧められたといっても、必ず従わなければならないといったものではありません。どんな場合でも離婚は人生を左右します。

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離婚を決意したら

 

離婚を決意したら今後の生活をどのようにするか、具体的に考えなくてはいけません。
女性の場合、自力で生活費を捻出する目処はあるか、住む場所はどうするかなど、生活設計の見通しをしっかり立てる必要があります。未成年の子供を引き取る場合はなおさらです。

離婚後の生活を考える
母子・父子家庭への福祉、公的支援

相手に法的離婚原因がある場合には、その離婚原因の証拠を確保して、離婚条件を有利にしましょう。話し合いがこじれて、調停・裁判になった場合は、これらの証拠が役立ちます。

法的離婚原因 
不貞行為の証拠とは 

離婚をすることによって以下の事項などを取り決めなければなりません。

●子供の問題

1) 親権・監護権

未成年の子供がいる夫婦が協議離婚をする場合、離婚後の親権者(法定代理人)を夫婦のどちらにするか、離婚前に決めなければなりません。
親権者は離婚届の記入事項で、記載がない場合には離婚届を受けつけてくれません。婚姻中は夫婦が子供の共同親権となりますが、離婚後は夫婦一方の単独親権となります。離婚後も父母が共に子供の共同親権となることはできません。

一般的には子供を引き取り育てる側が親権者と監護者を兼ねていますが、親権の「身上監護権」の部分を切り離して、親権者とは別に監護者を定めることもできます。

親権・監護権 

2) 面会交流権

面会交流権とは、離婚後に監護者ではない(子供を引き取らなかった)親が、子供と面会したり、一時的に過ごしたりする権利のことです。民法などの条文に定められた権利ではありませんが、親としては当然に有する権利であり、子供が別れた親に会える権利でもありますので、監護者は一方的には拒否できません。離婚後に必ずといっていいほど問題になりますので、離婚条件として具体的な内容まで、十分な話し合いが必要です。
面会交流権は親だけの権利ではなく、子供の福祉、利益でもありますので、子供の意向も尊重しなければなりません。

面会交流権

●氏の問題

1) 離婚後の戸籍と氏(姓)

結婚をすると夫婦は一つの戸籍を形成し、同一の氏(姓)を称するように定めています。
離婚により夫婦関係が解消されると、結婚により氏(姓)を変えた方は、原則として旧姓に戻り、戸籍から抹消されます。
結婚により氏を変えた方は、以下のいずれかを選択することになります。

 例:妻の旧姓が「田中」で、婚姻により「山本」に変わった場合。
 1. 婚姻前の旧姓(田中)に戻り、婚姻前の親の戸籍に戻る。
 2. 婚姻前の旧姓(田中)に戻り、新しく自分を筆頭者とした戸籍をつくる。
 3. 婚姻時の氏(山本)を相続して名乗り、新しく自分を筆頭者とした戸籍をつくる。

離婚後の戸籍と氏(姓)

2) 子の氏・戸籍

離婚をしたことにより、父母の氏に変更があっても、子供の氏や戸籍に変更はなく、子供の戸籍と氏は婚姻中のままです。
父母が離婚し、子供と同居する親(例えば母親)と戸籍が異なる場合、家庭裁判所に許可を得て、子供の氏を変更させることができます。
手続きは住所地管轄の家庭裁判所に「子の氏変更許可申立書」を申し立てます。

子の氏・戸籍

●金銭的な問題

1) 財産分与

財産分与とは、婚姻生活中に夫婦の協力によって得られた財産を、離婚時に清算することをいいます。
離婚の方法を問わず、法律で正当に認められた権利で、どちらに離婚原因があろうかなかろうか、原則として公平に分与されます。

財産分与

2) 慰謝料

離婚の慰謝料とは、不倫などの有責行為で離婚の原因を作った側が、精神的苦痛を与えた配偶者に支払う損害賠償のことです。
慰謝料は、不法行為(不貞行為、悪意の遺棄、暴力などの有責行為)で精神的苦痛を受けた側が請求できるものです。性格の不一致や信仰上の対立、家族親族間の折り合いが悪いなど、どちらか一方だけが責任があるという場合には、判断は難しく、双方の責任の程度の割合によって慰謝料が決まります。
また慰謝料を請求しないことも自由ですが、離婚後の経済生活の観点からも精神的苦痛を受けた場合は、請求した方が良いでしょう。

慰謝料

3) 養育費

養育費とは、未成熟の子供を育てていくために必要な費用のことです。
具体的には、子供が健全に社会人として自立するまでに必要となる全ての費用のことで、衣食住の費用、学校などの教育費、医療費、娯楽費等が養育費に含まれます。
未成年の子供の父母が離婚した場合、父又は母のいずれかが親権者となりますが、どちらに親権があるか関係なく、親であることにかわりはありません。
親である以上は子どもを養育する義務があり、離婚により子供を引き取らなかった親は、子供に対して養育費を支払う扶養の義務(生活保持義務)があるのです。

養育費

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取り決めた事項を離婚協議書にする

 

協議離婚では離婚届に必要事項を記入し、署名押印するとそれで終わりです。
離婚理由を書く必要もなく、財産分与・慰謝料・養育費などの約束は、離婚届の記載事項ではないので口約束になりがちです。
しかし、口約束だけでは何の保障もなく、「言った、言わない」の争いになってしまうことが多々あります。トラブル防止の為、取り決めた事項を必ず離婚協議書にすることが必要です。取り決めを書面にしないままの離婚はトラブルの元になります。

離婚協議書の作成ポイント
離婚する方法と手続き

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